密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

もっと知りたいモネ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

著:安井 裕雄

 

 「モネの人生は、いってみればセーヌ河からノルマンディーに至る流れを回遊する水辺の旅であった」という。クロード・モネ(1840-1926)を取り上げた美術解説本。薄めだが、オールカラー。多くの作品が紹介されている。25.6 x 18.2cmあるのでサイズとしても小さすぎない大きさになっている。本格的な画集ほどではないが印刷も悪くない。

 モネの生涯をたどりながら、その作風の確立の流れ、ナポレオン三世の登場や普仏戦争ジャポニズムの流行や鉄道の発展といった当時の時代背景、他の画家や画商たちとの交流、サロンと印象展といったイベントを、関連する多くの作品と共に紹介している。

 また、1890年に購入して終の棲家となったジヴェルニーのモネの家と「花の庭」「水の庭」及びそこから生み出された多くの作品の特徴についても解説されている。例えば、「睡蓮の当たり年」とされる1907年の作品においては、同じ画面において、木々と空は上から下へと遠ざかるのに対して、睡蓮は下から上へと遠ざかるように描かれており、この相反する2つの遠近法をひとつの画面に交錯させることで、虚像と実像が入り混じった独自の雰囲気を演出しているというポイントを明解に示している。

 個人的な話になるが、モネの作品は内外の美術館・特別展・常設展で何度も足を運んで鑑賞しており、特に、オランジェリー美術館の地下の部屋に初めて入ったときの感動は生涯忘れることができない。本書は、このオランジェリー美術館に収められた大作プロジェクトと展示についても手際よくわかりやすく説明してある。

 

単行本、80ページ、東京美術、2010/1/30

もっと知りたいモネ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたいモネ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)