著:ビートたけし
「だからこそ、人生というのは”間”だと思った方がいいんじゃないか。我々の人生というのは、生きて死ぬまでの”間”でしかない。生まれたときの”点”と死ぬときの”点”があって、人生はその間のことに過ぎない」。
ビートたけしの本。テーマは「間」である。漫才、映画、TV番組。いろいろ紹介されているが、確かにこの人が手掛けてきたことは「間」が重要な役割を果たす。といっても、堅苦しい内容ではなく、気軽に、楽しく読める。政治家達の失言やたけし軍団のへまを取り上げたり、ボケとツッコミが両方早い最近のお笑いの傾向とか、職を転々としたりしていた頃の話とか、毒舌度ということでいうと若いころより丸くなった感じはするものの、豊富なエピソードやユーモアを交えた独自の語り口は健在だ。
それにしても、確かに日本語には「間」を使った言葉が多い。「間近」「床の間」「間尺」「居間」「間合い」「間延び」「間に合う」。海外の一流俳優の間の取り方についても触れているが、特に日本独自の「間」の感覚というのは考えてみるとなかなか興味深いテーマのように思える。
一方、著者は、「間」を大事にする文化は過剰に空気を読む文化にもつながりかねないので、改良を重ねるのは上手いが、思い切ったイノベーションを生み出すという点ではマイナス面もあると指摘している。また、「間」が悪い人の共通の欠点として、自分の立場が分かっていなかったり、全体が見えていないということを挙げている。
終盤では、漫才ブームや自身のバイク事故なども振り返りながら、時代や人生と「間」の関係についても意見を述べている。
芸の世界や監督業や人生など様々なものに「間」という言葉に投影しながら著者の考えや現在の境地を語っているという点で、面白く読める本だった。
単行本、187ページ、新潮社、2012/10/17