著:本橋 成一
30年以上前の写真集。
上野駅の130周年を機に新装改訂して2012年に再発売されたという。
昭和の雑然とした雰囲気が漂い、
都会と地方の接点としてにぎわう、かつての上野駅。
ここに行き交った様々な人々の人間模様をスナップ撮影した作品が収められている。
新聞紙を敷いて座り、気長に電車を待つおばあちゃん。
転勤の見送りだろうか、万歳をして同僚を激励するサラリーマン。
駅員室で不安げな表情を見せる迷子。
大きな鞄を下げ、背中にダンボール箱を背負った老人。
日本食堂のはっぴを着たお弁当の売り子。
パンダの人形の前で記念写真を撮る家族。
靖国神社の参拝だろう、元所属部隊の名前が入った小さな旗の後を歩く人々。
立ち食いそばを食べる親子。
お目当ての列車を待つ鉄道マニア。
素朴な表情を見せる修学旅行生。
別れを惜しむカップル。
誰もいなくなった真夜中のホームと鉄路、がらんどうの駅舎。
あの頃の、時代が、人が、空気が、
夢や希望や、ある種のはかなさが、
渾然一体となって、
全編モノクロの写真の数々に鮮やかに遺されている。
ページをめくりながら、静かな感動に包まれた。
素晴らしい写真集である。
大型本、207ページ、平凡社、2012/12/16
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > ホビー・スポーツ・美術 > 鉄道
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 4,968円