密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考えており、このブログを立ち上げました。日々読んできた本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

長崎の教会

著:吉田 さらさ

 

「美しく可愛らしい建物を見て、心癒される人が多いと思いますが、もっと大切なのは、キリシタンがたどってきた悲しみと喜びの歴史です。長崎を旅する方々には、昔、この地に教会を建てた人々の心にも思いを馳せていただきたいと、願ってやみません」(長崎純心大学 片岡留美子学長)。


 2015年で、1865年にフランスからやってきた神父の前に浦上村の女性が進み出て、250年間密かに信仰を守り続けていた日本のキリシタンたちが「発見」された年から150年経ったという。もともとこの地には、徳川家光の時代に活動していたバスチャンという宣教師の「今から数えて7代後に司祭が黒船でやってきてそれ以後は毎週でも告悔をすることができるようになる」という予言が伝えられていたのだという。

 世界遺産登録が有力視されている長崎の教会群とキリスト教関連遺産を紹介した本。130ページに満たない本で、オールカラー。写真が豊富に掲載されており、長崎各地の個性的で素敵な教会の数々や遺跡に魅せられる。

 壮大な白亜に美しい花柄模様が映える紐差教会(平戸市)。鉄川与助の最後で最高傑作といわれるレンガ造りの田平天主堂平戸市田平町)。フランス人のマルマン神父の指導で作られた黒島天主堂佐世保市黒島)。国内現存最古の大浦天主堂長崎市)。かつて踏み絵が行われていた庄屋の家の跡地に建てられたという浦上天主堂長崎市)。フランス出身のド・ロ神父が私財をなげうって作った出津教会堂(長崎市)。住民たちが30年以上も資金を積み立てて作った赤レンガ作りの黒崎教会(長崎市)。ゴシック様式でリブ・ヴォールト天井の堂崎教会五島市福江島)。「白い貴婦人」と称えられる優美な木造の水ノ浦教会(五島市福江島)。文化財として大切に守られている五島最古の旧五輪教会堂(五島市久賀島)。完成まで9年を要したという花の装飾が愛らしい石造りの頭ヶ島天主堂(南松浦郡頭ヶ島)。

 多くの教会や遺跡が写真と解説によって次々紹介されている。中には17戸しかない集落であったのに人々が力を合わせて作ったものもある。個性的なものが多くヨーロッパの教会とはところどころ異なった個性があり、とても美しい。博物館や殉教の地についても紹介されている。

 しかし、この本は単なる観光案内の本ではない。中世以降のキリシタン弾圧とその犠牲になった人々や事件に各所でスポットを当てている。また、250年間もの間に人々が潜伏して信仰を守り続けられた理由として、特に浦上・外海・五島列島では「帳方」「水方(触頭)」「聞役」という役割と組織がきちんとしていたことが挙げられている。

 外国人居留地に教会が建てられ大政奉還が行われた1867年になっても「浦上4番崩れ」と呼ぶ大規模な弾圧があったというのは知らなかった。1868年にも「五島崩れ」という痛ましい弾圧がある。明治新政府が正式にキリスト教禁制を撤廃したのは明治6年(1873年)になってからである。

 日本にやってきた代表的な宣教師たちの献身的な活動や、当時の信徒たちの熱い信仰にも触れている。例えば、五島列島のマップにあるだけで52もの教会がある。けして人口が多いわけではないしゆとりもそうあったとは思えないこの島々でこれだけたくさんの教会が次々作られたことに改めて驚くが、それはまた、隠れた場所で密かに祈るしかなかったキリシタンたちが、時代が変わって堂々と自分たちの祈りの場を持ってよいという権利が得られるようになった喜びに駆られていたことを示しているようだ。

 読みやすく写真が多くて引き込まれるし、長崎の教会や遺跡の紹介を通して様々な苦難に耐えたキリシタンたちにも自然に思いをはせられるようにまとめてある。巻末には「長崎キリスト教史」「長崎で活動した主な宣教師」「一度は訪れてみたい教会」がある。

 

単行本、128ページ、ジェイティビィパブリッシング、2015/10/15

 

長崎の教会 (楽学ブックス)

長崎の教会 (楽学ブックス)