著:藤木 TDC
2011年8月に発売された「アダルトビデオ最尖端」という本に加筆修正を加え、雑誌の記事をベースにした新章を加えて文庫版として再発売された本である。著者はフリーライター。
内容は、1990年代から2000年代にかけてのいわゆるアダルトビデオ分野の特殊ジャンルについて取材した内容をまとめたもの。元々雑誌の連載として書いていたようだが、AVは今やネット配信が多くなり、その情報提供も紙媒体が減ったため、もうその雑誌は存在していないという。
今やそのままの言葉で世界的に定着した「BUKKAKE」(ただし「ブッカキー」と発音するらしい)。自走式バイブロボット。美女の巨根(男ではなく)。戦火のユーゴスラビアでの命がけのAV撮影。格闘技ポルノ。微乳。60歳代のAV女優に最高齢85歳のシニアAV男優。特に中小の業者は、このような企画モノに活路を見出してきたようだ。実際に企画や監督を担当した人たちに直接取材した声が各所に盛り込まれている。
「BUKKAE」が海外で定着するきっかけになったのは、松本和彦氏が1996年にハリウッドへ乗り込んで、全世界のポルノメーカーとディーラーが集まる「VSDA」という見本市に出展したことがきっかけではないかという。ブースは黒山の人だかり。さらに、FBIが来て「これは虐待だから上映はやめろ」と言われたことがタブロイド誌に載ったことで反響が広がったのだという。
専用ロボット開発に燃える人は、「女性のアソコは意外に力が強いんですね。使用中にマシンのほうが持ってかれて、壊れることもあるんですよ」と述べている。また、女性格闘家を起用するタイプのものは全国レベルの大会で上位に入った女性が多く登場しており、結局異例の絡み無しになってしまったが一切ヤラセをしなかったものが「メチャメチャ売れた」りしたそうだ。2014年10月に最高裁判決が下ったビデ倫裁判についてもページが割かれている。
かつてはAVがビデオデッキの普及に貢献したという伝説もあったそうだ。今や、ネットでは無修正の動画が多く見られる。一方、警察や裁判所はそういう現状を知りつつ、従来媒体のわいせつ認定を行う。少子高齢化の影響も受けている。AV業界を取り巻く状況は年々厳しさを増しているという。企画ものAV作品とその背景にも、日本人のこだわり気質や時代がいろいろな形で反映しているものだな、と思った。
文庫、287ページ、文藝春秋、2015/12/4