密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

国旗で読む世界史

著:吹浦 忠正

 

 日の丸をはじめとする国旗にまつわる話やエピソードについて書かれた本。著者は1964年の東京オリンピックで国旗の担当を務め、1998年の長野五輪でも儀典担当顧問を務めた。最初の8ページの口絵部分のみカラー印刷。

 東京五輪長野五輪では「日の丸」の丸の部分の大きさが違う。「日の丸」の縦横比は国旗国歌法によって2:3になった。アメリカの星条旗は10:19、バチカンの国旗は正方形、カタールの国旗は11:28と世界の国旗で一番横長。国旗は行事、国家の代表としての訪問やイベント、紛争や戦争において印として掲げられ、重要な役目をはたしてきた。アムンゼンが北極点に掲げたり、アームストロング船長が月面にさしたり、激戦の末に硫黄島鉢伏山に掲げた写真によって海兵隊の認知度が米国内で一気に上がる。アロー号事件は臨検時に清がイギリスの国旗を燃やした。咸臨丸は日の丸を掲げて太平洋を渡り、ブロードウェイのパレードで日の丸の旗が林立する中でパレードを行った。

 1928年のアムステルダム五輪で織田幹雄が日本人初の金メダルに輝いたとき、大会組織員会には日の丸を用意しておらず、日本選手団が持っていた旗が掲げられたので、サイズが異様に大きい。オリンピックのような大会では国旗に関するトラブルが過去に何度か発生しており、デザインが違っていたり、上下が逆だったりすることがあったようだ。1964年の東京五輪では日の丸の赤をどうするかで資生堂の科学研究所が支援した。1964年の東京五輪長野五輪では日の丸の白の部分の色も違うという。

 独立や民主化のときにも民衆が新たな国旗を持って熱狂して振り回すという光景が歴史上なんどもみられる。1989年にルーマニア独裁政権が倒れたとき、人々は中央の紋章を切り取った国旗を振り回して熱狂した。ソ連の崩壊時には国旗も消え、ロシアではクーデターを起こそうとする勢力に対して、エリツィンがロシア議会前で三色旗が掲げて国民の支持を取り付けた。南アフリカの国旗は1994年の人種差別撤廃を機に制定され、元々は仮のものだったがそのまま正式な国旗になった。カダフィ時代の後半のリビアは世界で最も単純な国旗だったが、カダフィ体制の終わりとともに従来の国旗も役割を終えた。オーストラリアではユニオンジャックを除いたデザインの国旗が検討されており、有力な案が口絵に紹介されている。

 ちなみに、世の中には国歌に歌詞がないものも存在している。コソボ、スペイン、サンマリノモーリタニアクウェートといった国々である。コソボの場合は国内に2つの言語があるので問題が生じないようにそのようになっているという。

 体系的に書かれた本ではなく、国旗に関する話を散発的に集めたものであり、気軽に読める内容になっている。

 

新書、286ページ、祥伝社、2017/9/2

 

国旗で読む世界史(祥伝社新書) (祥伝社新書 515)

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