密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

日本軍鹵獲機秘録

著:押尾 一彦、 野原 茂

 

 第2次世界大戦期を中心に、日本軍が鹵獲(ろかく)した連合軍の航空機の記録を紹介した本である。第1次世界大戦の参加で戦利品として獲得したドイツ軍の航空機、シベリア出兵で獲得したロシアの飛行機もある。日中戦争とノモンハン事件で鹵獲された「ポテーズ25」「カーチスホークIII」「I-16 Tip10」の写真や記録もある。

 鹵獲した飛行機の種類は多岐にわたる。「P-40D」「P-40E」「B-339D」「CW-22B」「ハリケーンMk.22B」「LB-30」「DB-7C」「ラグ3」「F4uコルセア」「P-47D」「B-25」「F6F-5」。日の丸をつけつた「B-17 D」や「P-40」もある。全体的には「P-40」が一番多い。大戦末期には「P-51D」をほぼ完全な形で鹵獲し、日本のパイロットによって試験飛行によってその優秀さが確認されている。

 鹵獲機は敵機の調査・研究に利用されている。ただ、B-17のノルデン爆撃照準器や排気タービン過給機は大戦初期に獲得したものを研究したものの、当時のわが国の技術では容易にコピーすらできない状況で実用化には至らなかった。

 

 

 一方、昭和20年に鹵獲した米海軍機を調査したところ、無線機のアースの要領がよく、これを手本にノイズが多くて使い物にならなかった日本側の航空無線機を改修したところすぐに性能がよくなったという即効性の高い効果がもたらされたこともあったようだ。

 鹵獲した中で稼働するものは実際に試験パイロットが操縦し、実際に乗った上での感想が記録されてるということも行われた。

 

 鹵獲機の特殊な用途としては、「加藤隼戦闘隊」の映画撮影のために空戦シーンで実機が使用されている。昭和17年7月には羽田飛行場で鹵獲機の展示会が行われてたくさんの見学者が押し寄せたということもあったそうだ。幻のB-29鹵獲作戦があったことにも触れられている。

 

単行本、166ページ、潮書房光人社、2017/7/1

日本軍鹵獲機秘録

日本軍鹵獲機秘録

 



 マニアックな内容であると同時に、当時の日本軍が敵機の鹵獲をどのように行い、どう活用していたかの一端がわかる本である。付録として、「列国軍用機資料集」と「日本海軍の列国航空機現状認識」が付いている。