密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

Suicaが世界を制覇する アップルが日本の技術を選んだ理由

著:岩田昭男

 

 日本を世界に先駆けた電子マネー大国に押し上げ、優れた高速処理性能でSuicaをはじめとする国内の電子改札システムの標準にもなったフェリカ方式。ところが、日本国民の生活に今やすっかり浸透しているメードインジャパンのこの技術が、専門家といわれる人たちからは、NFCのTypeA/TypeBと対比して世界標準規格ではないと後ろ指をさされ、グローバル化から背を向けた「ガラパゴス化」とさえ揶揄され、将来的には淘汰される可能性すらあると指摘されてきた。

 しかし、2016年10月25日、 その空気が一転する。Apple PayのSuicaのサポート。さらにAppleはiDとQUICPayの仕組みを利用してクレジットカードの決済もできるようにした。まさに起死回生。「Suica応援団」を自任する著者は、驚きと喜びを隠さない。今までのSuicaの歩みとAppleSuica方式を採用した理由および過程を中心に説明した本。

 手数料は取るがデータは集めないApple Payと、手数料は取らないがデータを取るGoogleAndroid Payの方針の違い。VISAの思惑。楽天の動き。クレジットカード業界の新たな主導権争い。あくまでも一般向けの入門書であるので技術的にはそれほど詳しい本ではないが、JRがSuicaシステムを開発した経緯やそこに電子マネーの機能を加えた企画段階の話から、AppleSuicaに関心を持って採用した理由など、かみ砕いてわかりやすく説明している。特別なインタビューコーナーのようなものは設けられていないが、Apple Pay担当副社長のジェニファー・ベイリー氏やJRの関係者をはじめ多くの人々に聞き取りを行っているという。

 本書のタイトルはかなり大きなものになっている。実際に現実がそのようになるかは疑問だし、率直に述べて夢想がまじっているといえなくはないものの、そのように主張する著者なりの見解については終盤に述べられている。

 

新書、208ページ、朝日新聞出版、2017/5/12