著:泉田 良輔
FinTechが注目を浴びる中で、銀行業界が今後どのようになっていくのか、著者の意見をまとめた本。今後の銀行の姿を、「モバイル型」「プライベートバンク型」「投資銀行型」「クラウド型」の4つに分けて、各銀行は4つのいずれかもしくはこのすべてを含む複数のタイプを追及することになるだろう、という主張に基づいて書かれている。
著者によると、現在、日本の銀行は、以下の3重苦に直面しているとし、その状況について解説されている。
- 貸出を伸ばせない
- 利ざやが縮小する
- 利回りがない
そして、この3重苦に対して、日本の銀行は以下のように対処しようとしていると説明されている。
- 不動産業への貸出拡大
- 手数料ビジネスへのシフト
- 海外への展開
著者は、特に地方銀行を中心に、今後預金が減ってゆく可能性を指摘している。なんだかんだと預金は間接金融の源泉であるから、これが流出していくことは将来的に貸出業務をはじめ銀行経営の根幹を揺るがす可能性がある。また、「10年あればテクノロジーで世の中は変わる」とし、ネット事業者の金融事業、審査と貸出業務をどこまで機械で置き換えられそうか、FinTechの台頭の影響、欧米の金融機関の状況、中国のAlipay、ApplePayのビジネスモデル、住信SBIネット銀行、プリペイドカード方式などの状況についてひと通り解説し、著者の意見を述べている。
著者は銀行での勤務経験は無いが、証券アナリストとしての経験があり、多くのデータを引用して解説を行っていて、特に違和感のある内容ではない。FinTechの時代において金融機関、特に銀行を取り巻く状況は大きく変わってきているので、それを理解するもしくは今後について考える上での材料のひとつになると思われる。
単行本、255ページ、クロスメディア・パブリッシング、2017/3/27
目次
第1章 私たちと銀行の関係はどう変わるのか
第2章 銀行のいまを知る
第3章 銀行のこれからを考える
第4章 世界の銀行はすでに動き始めている
第5章 金融にシリコンバレーがやってくる
第6章 日本の銀行が向かう先にあるもの