密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

著:野口 悠紀雄

 

 ビットコインをはじめとするブロックチェーン技術が、金融や社会にもたらす影響について述べたものである。2014年出版であり、イノベーション分野の進歩のスピードからみて、すでにあちこち古い。ただし、日本におけるブロックチェーンブームの火付け役として一役かった本であり、紹介しておく。

 長年の経済の専門家としての視点だけでなく、ある程度ブロックチェーンの技術的なポイントにもきちんと踏み込んで書かれてあった。カラードコインやネームコインリップルイーサリアム、スマートコントラクト、スマートプロパティについても言及されている。簡便なものとはいえ、巻末には楕円曲線による暗号化やECDSA署名の解説も添えられている。また、ビットコインの問題点に対する誤解や、仮想通貨に比べて現代の中心になっている預金通貨制度の弱い点や、現在の海外送金システムの問題点を指摘しているところなどは、FinTechの紹介本レベルを超えていて、勉強になった。

 ただ、FinTech分野の進展は速く、既に古くなってしまっている部分はある。例えば、その後日本国も、資金決済法を改正してビットコインを貨幣として認定する方向が決まった。また、国産のブロックチェーンが次々誕生したり、様々な金融機関で実証実験が行われたりと、かつての日本の海外に対する遅れも急速に挽回されてきている。ただし、そのような点は本書出版後の時代の流れの中で生じたことであり、著者の責任ではなく、読み手が気を付けるべきことだろう。いずれにせよ、予想より良い本だった。

 

単行本、276ページ、ダイヤモンド社、2014/6/6

 

目的

第1章 マネーの革命が始まった
第2章 きわめて斬新なビットコインの仕組み
第3章 ビットコインを支える技術
第4章 現代社会におけるマネーの仕組み
第5章 マネー革命は社会をどう変えるか
補 論 公開鍵暗号電子署名

 

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない