密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

ブロックチェーンの衝撃

著:ビットバンク株式会社&『ブロックチェーンの衝撃』編集委員会 、監修:馬渕邦美

 

 ブロックチェーンの本。経済学者、ビットコイン業者、法律家、ブロックチェーンのスタートアップ、他、個性に富んだ15人専門家の解説や意見を一冊まとめた形になっている。この分野のスピードは速く、内容的にはところどころもう古い。

 序章となっている野口悠紀雄氏担当部分は7ページ分しかないが、仮想通貨が社会にもたらすものとして、マイクロペイメントや安い手数料の国際送金、仮想通貨間の競争や国家との関係、ブロックチェーンの応用といったことにコンパクトに答えている。

 第1章では、山崎大輔氏と廣末紀之氏が、ビットコインビジネスについて、幅広く説明している。

 第2章では、3人の識者がビットコインの可能性と課題について述べている。芝章浩氏は法律面からの解説。ジョナサン・アンダーウッドの技術の解説は、レベルが高めである。

 第3章は、ブロックチェーンが起こす金融変革とその仕組み。斉藤賢爾氏のPoWとPoSの解説はロジカルで丁寧だ。後藤あつし氏による金融サービスへの応用は、証券取引、電子マネー中央銀行によるデジタル通貨と、ブロックチェーンを適用した場合にどうシステムが変わるかということをシミレーションしたもので、これは金融関係者がブロックチェーンについて考えるときに参考になる内容である。

 第4章では、主に金融以外の分野でのブロックチェーンの応用や、ビットコイン2.0について検討したものである。流通、IoT、シェアリングエコノミー、ゲームと、様々な適用分野について考察がなされている。

 第5章は、EthereumとNEMについて。それほど詳しい内容ではないが、ブロックチェーン技術の広がりを感じさせる。

 15人がそれぞれの切り口で書いている。難易度も、書きぶりも、担当者ごとに違う。したがって、少々寄せ集め感はあり、あまり体系的ともいえない。ただ、であるゆえに、立体的で多様な角度から、ブロックチェーンについての幅広い知見が得られる内容になっているともいえる。ただ、内容は既に古い。

 

単行本、296ページ、日経BP社、2016/6/8

 

目次

はじめに(馬渕 邦美)
序章(野口 悠紀雄)
1章 総論
ビットコインの技術が及ぼす様々なビジネスへの影響(山崎 大輔)/ビットコインと ビジネス(廣末 紀之)
2章 ビットコインの可能性と課題
ビットコインと個人・社会・国家(大石 哲之)/ビットコインと法(芝 章浩)/
ビットコインの最新技術(ジョナサン・アンダーウッド)
3章 ブロックチェーンが起こす金融変革とその仕組み
ブロックチェーン概論(朝山 貴生)/ブロックチェーンの経済モデル(斉藤 賢 爾)/金融サービスへの応用(後藤 あつし)
4章 ブロックチェーンの産業へのインパク
非金融分野におけるブロックチェーンの可能性と課題(杉井 靖典)/ブロックチェー ンとIoT(栗元 憲一)/ロックチェーン2.0プロジェクト(東 晃慈)
5章 新たに生まれるプラットフォーム
スマートコントラクト構築プラットフォーム「Ethereum」(佐藤 智陽)/NEMブロックチェーン技術の新しいパラダイム(ロン・ウォン)

 

ブロックチェーンの衝撃

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