密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

ドキュメント 金融庁vs.地銀 生き残る銀行はどこか

 

著:読売新聞東京本社経済部

 

 森信親長官になってから、金融庁は方針を大きく変更している。バブル崩壊後に厳しい監査を行うことで金融機関の健全性を要求してきた方針から、顧客資産形成への努力や銀行に対する地元企業の成長への貢献とそのための事業の目利き力を強く求めるようになった。従来の金融庁の金融検査マニュアルの見直しも検討されている。

 特に地銀は収益の低下傾向が鮮明で、空前の再編ラッシュを迎えている。その一方、地銀の抱えている不良債権率は歴史的な低さになっている。つまり、リスクを極端に恐れて優良企業のみに限って担保や保証に頼った融資を行った結果、不良債権はほとんど生じなくなったものの、地元経済への貢献が不十分な地銀が増えてしまったしまった、と金融庁は見ている。また、利用者に還元すべき利益を吸い上げすぎているのではないかと、生命保険の窓販の手数料開示を要求したりもしている。

 本書は、そのような金融庁の方針変換を、1997年の金融危機や、1998年の金融監督庁の発足、2000年に金融監督庁と大蔵省の金融企画局の合併による金融庁誕生、2002年の金融再生プログラム、2005年のペイオフ凍結全面解除、2008年のリーマン・ブラザーズ破たんと金融市場の混乱といった経緯を振り返りながら、「フェデューシャリー・デューティー」を唱える森長官の方針、地域金融リアルタイムチームの発足、一部地銀の模索や挑戦、元金融監督局長で元大蔵官僚でもある西原政雄氏を立てて地銀協が保険会社の手数料開示方針に対して金融庁へ反発したことなども取り上げられている。

 新聞社らしい抑制の利いた書き方でまとめられている。森長官の就任による方針変更がどのようなものかが客観的によくわかるし、その背景にあるのは何かということも見えてくる。その一方で、「モニタリングというより、モリ(森)タリングになっている」とか「森を見ろ 森だけを見ろ 森を見ろ」というような金融庁内の声を紹介しながら、現在の金融庁の方針があまりに森長官個人の色が濃いものであることも指摘されている。また、福島銀行が倒産経営のある起業家への融資を行ったり、北越銀行ニシキゴイを担保にしたり、山梨中央銀行が2012男から行員10人ずつを1年間地元企業に無償で出向させたりしているような、各地銀が企業の目利き力や支援能力を磨くために行っている工夫の紹介は、新聞社らしい取材力が生きている。ただ、終盤に収録されている森信親長官の単独インタビューは、実質3ページに満たないもので、質量ともに少々物足りなさを感じた。

 

新書、237ページ、光文社、2017/5/17