著:吉野源三郎、マンガ化:羽賀翔一
なんと、100万部を突破したというので、読んでみた。1937年に出版された吉野源三郎氏の「君たちはどう生きるか」のマンガ版である。主人公を「コペル君」と名付けたおじさんのノートの部分が結構多くを占めるので、実際はマンガだけではない。
原著の方は読んでいないので比較はできないが、このマンガ版については、直接及びノートを通じたおじさんとコペル君の対話と、コペル君と友人たちとのエピソードの2本を軸にして構成されている。原作そのままではないとのことで、その点について、羽賀翔一氏は以下のように、「僕がやったのは『翻訳』かもしれない」と、インタビューで説明している。
さすがに古い本をベースにしているので、今の時代の価値観からすると、人によっては少し違和感を覚えるところもあるかもしれない。また、基本的に主人公の年齢のような若い人向けの本である。
ただ、思春期の青少年に対する人としての基本的な問いかけが中心の話なので、扱われているテーマ自体については、時代の違いはあまり関係ない汎用性の高いものであるように思われる。
ストーリーになっているので、ネタバレにならないようにあらすじに関する説明は避け、いくつかポイントになる言葉を拾ってみる。
「ほんとうに、君の感じたとおり、一人一人の人間はみんな、広いこの世の中の一分子なのだ。みんなが集まって世の中を作っているのだし、みんな世の中の波に動かされて生きているんだ」。
「人間が人間同志、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにありはしない」。
「生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ」。
「英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、本当に尊敬ができるのは、人類の進歩に役立った人だけだ。そして、彼らの非凡な事業のうち、真に値打ちのあるものは、ただこの流れに沿って行われた事業だけだ」。
「自分の過ちを認めることはつらい。しかし過ちをつらく感じるということの中に、人間の立派さもあるんだ」。
「僕たちは自分で自分を決定する力を持っている。だから、誤りから立ち直ることもできるのだ」。
尚、こういう売れまくっている本は、ネットでもいろんな意見がある。ベストセラーというのは、ベストセラーになるという現象自体が観察や考察や記事の対象になりうるので、それはそれで興味深かった。ジブリ作品ではどのようになるだろうか。
単行本、320ページ、マガジンハウス、2017/8/24
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