著:河合 雅司
少子高齢化についての本は、今や珍しくない。この本は、日本の高齢化、少子化、そして人口減少について、年表感覚で書いてあるのが特徴である。このため、この先、西暦何年ごろ具体的にどういうことが起こるかが、より具体性をもってリアルに感じられる。売れているのも、そこが理由だろう。
簡潔でわかりやすいだけでなく、豊富にデータが引用してあって、内容的な重厚感とともに説得力がある。その中には、「輸血用の血液が不足する」「火葬場が不足する」「全国の3分の1が空き家になる」など、考えてみれば確かにそうだろうが、多くの人があまり普段からそこまで深刻に考えていなかったようなことも含まれている。
中には、超高齢化社会になるのに、地方では老人ホームですら維持が難しくなるというような、「えっ?そうなの?」と意外あるいは予想外に思うことも含まれている
また、素人考えだと「少子化で人口が減ったなら、出生率が上がれば解決するんでしょ」と思いがちだが実際はそのように単純には解決しないことなどもわかり、大変勉強になった。
著者は、対策として、「小さくても輝く国になる」(p.148)ことを提唱する。ただ、本書を読んで、日本の置かれる立場は良く理解できたが、この辺の対策として挙げられていることはいささか賛否が分かれるように思われる。少なくとも、具体的な根拠ということでいくと、問題の指摘に比べて説得力という点では及ばない。
いずれにせよ、この国に日本人として住んでいる以上、少子高齢化とまったく無関係でいられる人はいない。この問題は自分達の暮らしに直接かかわり、様々な影響を及ぼすことがよくわかるという点で、読む価値は十分ある。
新書、208ページ、講談社、2017/6/14
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)
- 作者: 河合雅司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/06/14
- メディア: 新書