密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

アンヌ隊員だからこそ語れるウルトラセブン秘話。「セブンセブンセブン―アンヌ再び…」

 著:ひし美 ゆり子

 ウルトラセブンでアンヌ隊員役だった、ひし美ゆり子さんが、ウルトラセブンの撮影現場や関係者の思い出や秘話を中心に、自らの青春を振り返った本。友人が本人に内緒でミスコンに応募し東宝に採用されるまでの歩みや、ウルトラセブン終了後の足跡についても綴られている。 

 

「作品では、マドンナ的な存在のアンヌ隊員も、毎日が失敗失敗の連続。何をやってもとんちんかんで、それは破天荒な私の青春そのものでした」。(本書より)

 

 なんといっても、数々のエピソードが面白い。戦争の話をすると止まらなくなるキリヤマ隊長。歌が上手だったダン。牢名主のようなマムシさん。仕切り上手なソガ隊員。ウルトラマンの着ぐるみでの活躍が認められてウルトラ警備隊の一員に抜擢されたアマギ隊員。アンヌは満田監督に怒られて干されてしまったのが2回あるという。

 独自の美意識を持っていてちょっと変わったイメージの作品を作っていた実相寺監督。真理アンヌをイメージしてアンヌ役を創作したという脚本家の金城さん。密にアンヌに憧れていたことが後年わかったという同じく脚本家の市川森一さん。近寄りがたい監督さんとは違って、ひし美さんにとってもっとも身近な存在で宴会にも情熱を燃やしていた円谷のスタッフたち。

 満田監督は30歳で、スタッフには未成年の子もいたし、ひし美さんも20歳だったというから、みんな若い。当時の現場の人たちの熱気が行間から伝わってくる。

 ウルトラセブンについても1話から最終回まで、ひとつひとつ逸話を披露しながら全部おさらいしてくれているから嬉しい。「ポインター」は中古のクライスラーを5万円の破格値で買って改造したものだとか、監督の最終回へ向けての布石とか、とても面白かった。

 映画女優やテレビ女優時代、まだ駆け出しだった村野武範と原田大二郎を連れて「ロック」という店に通っていたことや、そこで松田優作に会った話とかも興味深い。京本政樹との交流とかはちょっと笑った。

 しかし、ウルトラセブンの視聴率は30%超えていたとは。後半は下がったようだがそれでも20%台。何度も再放送されたし、改めてすごい人気だったと思う。ちなみに、アンヌの白衣姿は、看護婦じゃなくて医者だったというのは、この本を読むまですっかり誤解していた。当時の写真も収められている。それにしても、改めて思う。アンヌ、きみはきれいだ。

 

文庫、254ページ、小学館、2001/3/1

セブンセブンセブン―アンヌ再び… (小学館文庫)

セブンセブンセブン―アンヌ再び… (小学館文庫)

  • 作者: ひし美ゆり子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2001/03/01
  • メディア: 文庫