著:佐野勝彦
タイトルを見て、いくらか下心を持って手に取ったが、みごとに裏切られた。とてもまじめな本だった。株式会社トンボで制服の調査研究をしてきた人が、女子高生を中心に、高校生の制服の着こなし事情とその背景にある心理、さらには学校側の思惑と制服の変遷についてのべた本。
著者は実際に長年制服姿の女子高生の路上観察とグループインタビューを重ねており、そこで得られた声や知見が披露されている。警察に同行を求められたり、女子高生マニアに同類と思われて声をかけられたりした経験もあるそうだ。
「つまるところ、制服を厳しく見つめる生徒が、学校とメーカーに変革を迫り、その結果、制服が魅力的になった。そしてそれを素材にして、生徒たちが自分流の着こなしを編み出し、制服を自らの世代服に認定したということです」。
女子高生たちの制服姿のこだわりは、まずボトムの方。ボディラインは成熟した大人の女には勝てないのでそこを強調するより、スカートを巻き上げてひざ小僧を見せたりすることで若さの魅力を表現することを追求する。そのひざにあわせて健康的にリズムをもって揺れるスカート、そのゆれを増幅するプリーツやソックスといったものが決まっていき、そういったボトムに似合うブラウスといった上半身との組み合わせのこだわりが発揮される。
その一方、神戸や大阪の一部では長いスカート丈が流行って、先生が「普通丈にしなさい!」と指導する事態がおきているから面白い。
学校側の悩みも深い。学校の校則と制服の着くずしの間のバトルはさながら禁酒法時代のよう。しかし、さえない制服はそれはそれで学校の人気低下を招くので、制服のデザインを変更する学校は毎年かなりの数に上る。
メーカー側も厳しいコンペを勝ち抜くために日夜研究をしており、デザイナーズブランドもある。ただ、斬新で個性的なデザインが人気かというとそうでもなく、個性的過ぎる制服は、生徒側で工夫の余地が少ないのでかえってウケがよくないらしい。
その一方で、日本の制服が海外で「クール」だとみなされて外国人が日本の女子高生姿を真似る。さらには大学生が制服を着たり、なんちゃって制服が流行るということもおきている。下心は裏切られたが、制服の奥の深さの一端をまじめに理解できる好著だった。
新書、226ページ、光文社、2017/11/16