密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

科学

〈オールカラー版〉 魚はエロい

著:瓜生 知史 海中の生物の様々な生殖行動について紹介した本。タイトルも文章も、少しふざけているような軽い感じがする。しかし、そこにだまされてはいけない。表面的な書きぶりはともかく、本文で取り上げられている中には、かなり珍しい瞬間を観察した…

マンガ ホーキング入門―天才物理学者の人生とその宇宙論

著:ヨセフ・マッケヴォイ、イラスト:スカー・サラーティ (イラスト)、訳:杉山 直 ホーキングの歩みを知るという点に限れば、興味深く読めました。ホーキングを中心に他にもいろんな科学者が登場するし、読みやすい。そもそも簡単なテーマではないので、う…

富士山大噴火が迫っている! ‾最新科学が明かす噴火シナリオと災害規模‾ (知りたい!サイエンス)

著:小山 真人 富士山は活火山である。そして、著者によると、今の富士山の状態は、寝ている人がちょうど「寝返りをうった状態」ということだ。 日本をよく知らない外国人であっても、Mt. Fuji はたいてい知っている。日本人にとっては桜と並んで日本を象徴…

「流れる臓器」血液の科学―血球たちの姿と働き

著:中竹 俊彦 「私は、マスコミが広めた『血液サラサラ』『血液ドロドロ』は、医学や科学科学の立場からはふさわしくないと考えます。『血液型性格診断』など論外のことです」。血液の成分、働き、赤血球や白血球などの役割、仕組みの概要についてわかりや…

なぜ蚊は人を襲うのか (岩波科学ライブラリー)

著:嘉糠 洋陸 マラリア、フィラリア症、デング熱、日本脳炎、西ナイル熱、ジカ熱。蚊にさされることはかゆくなるというだけでなく、人類に病気をもたらしてきた。蚊の研究は、この点において、単に生き物の生態を調べるという以上の意義を持つ。 蚊は、双翅…

ホーキング、宇宙と人間を語る

著:スティーヴン ホーキング、レナード ムロディナウ、訳:佐藤 勝彦 「M理論はアインシュタインが夢見ていた統一理論です。単なる素粒子の集まりである私たち人間が、私たちと宇宙を支配する法則の理解にここまで近づいていることは偉大な勝利です」。 ホ…

ホーキング、自らを語る

著:スティーヴン・ホーキング、監修:佐藤 勝彦、訳:池 央耿 「二十一歳で筋萎縮性側索硬化症が発症したときには、ひどく不公平に思った。どうしてこんな目に遭わなくてはならないのだろうか。人生、もはやこれまでで、多少は自負していた能力もついに発揮…

排泄物と文明: フンコロガシから有機農業、香水の発明、パンデミックまで

著:デイビッド ウォルトナー=テーブズ、訳:片岡 夏実 著者の計算によると、2010年に全世界ですべてのウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが排出した畜糞の量は141億3645万トンになるという。これは353億4112万5000立法メートルに相当し、標準的なサッカー場(幅60…

日本の伝統 発酵の科学 微生物が生み出す「旨さ」の秘密 (ブルーバックス)

著:中島 春紫 「発酵と腐敗を区別するのは科学ではなく、文化である」(小泉武夫)という。食品を保存し、うまみを引き出し、消化吸収と栄養価を向上させる。発酵という言葉の定義はあいまいで、細菌による発酵をともなわない紅茶の発酵も発酵とされるが、…

見えない巨大水脈 地下水の科学―使えばすぐには戻らない「意外な希少資源」 (ブルーバックス)

著:日本地下水学会、井田 徹治 「現在のような地下水の浪費を続けていけば、やがて世界の穀物生産は減少し、深刻な食糧危機を招くことになる。すでにその兆しは各地で表面化しつつある」(レスター・ブラウン博士)。 本書を読むと、上記の指摘はオーバーで…

銀河のすべて (ニュートン別冊)

銀河系の全体像。ブラックホール。銀河同士の衝突。ダークマター、ダークエネルギー。銀河について、解説した科学雑誌Newtonの別冊である。オールカラーで、Newtonお得意の美しいイラストや写真がたくさん掲載されており、視覚的かつ直観的に銀河について理…

脳をどう蘇らせるか (岩波科学ライブラリー)

著:岡野 栄之 中枢神経系の再生は極めて精密で、再生が難しいと考えられてきた。本書は、神経幹細胞に着目してその中枢神経系の再生方法についてのとっかかりをつかんだ研究者が、その研究内容について説明した本である。後半では、自らの研究の足跡につい…

死なないやつら

著:長沼 毅 極限状態に耐えられる生物や生命の進化の原理について紹介しながら、生命ついての見解をまとめた本。著者は、極限環境の生物学を専門とする大学の准教授。 不死身で有名なクマムシ。脱水し、水の代わりにトレハロースで体内を満たすことで、クリ…

宇宙、深海、高山。人間の体が限界ギリギリの環境にどこまで適用できるか徹底解説。『人間はどこまで耐えられるのか』

著:フランセス・アッシュクロフト、訳:矢羽野 薫 「長期の(宇宙)飛行では赤血球の数が少しずつ減り、骨からカルシウムがにじみ出て、筋肉が萎縮する。このような変化のほとんどは六週間ほどで安定するが、骨の損傷はずっと続き、一年におよぶミッション…

祝イグノーベル賞受賞!「メスがペニスを持つ昆虫の研究」で世界を驚かせた画期的な研究成果。「昆虫の交尾は、味わい深い…。」

著:上村 佳孝 「メスがペニスを持つ昆虫の研究」の業績により、2017年の「イグノーベル賞」の共同受賞に輝いた学者が、昆虫の交尾研究について熱く語った本。著者が「イグノーベル賞」に選ばれたのはこの本が出版された後なので、それについては書かれてい…

ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー

著:NHK「ゲノム編集」取材班 2015年7月30日のNHK『クローズアップ現代』用に取材した内容を元に本にしたものである。「クリスパー・キャス9」と呼ばれる手法を中心に、画期的な遺伝子編集技術の発明とその広がりについて追ったものである。 ゲノム編集技術…

トコトンやさしいアミノ酸の本 (今日からモノ知りシリーズ)

著:味の素株式会社 タンパク質はアミノ酸がつながってできている。よって、アミノ酸は生き物に欠かせない物質である。アミノ酸はペプチド結合(アミノ基とカルボキシ基がつながった結合)によってペプチド(アミノ酸が2~数十個つながったもの)になり、さ…

「ありがとう」と書いた紙を貼った容器で凍らせた氷の結晶はきれいで「ばかやろう」と書いた紙では汚い結晶になる?「水はなんにも知らないよ」

著:左巻 健男 水に関しての様々な疑似科学を紹介してそれについての検証を行い、科学リテラシーを身につける必要性を説く本です。タイトル自体に「水は答えを知っている」という本への批判がこめられています。 水は答えを知っている―その結晶にこめられた…

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃

著:小林 雅一 タイトル通りの本。ノーベル賞受賞が確実視されているエマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Marie Charpentier)とジェニファー・ダウドナ(Jennifer Anne Doudna)の女性2人の共同チームが試験管内でクリスパー(CRISPER)によるDNA編集に成…

もっと変な論文

著:サンキュータツオ 「美しい夕景を見たとき、それを絵に描く人もいれば、文章に書く人もいるし、歌で感動を表現する人がいる。 しかし、そういう人たちの中に、その景色の美しさの理由を知りたくて、色素を解析したり構図の配置を計算したり、空気と気温…

ヘンな論文

著:サンキュータツオ おススメの一冊。大真面目に書かれた変わった研究論文を探して紹介した本である。著者は日本初の「学者芸人」。一般人の常識を見透かしたツッコミを各所に入れながら、面白おかしく、見つけた珍論文の数々を紹介している。 「河原町の…

人類は歴史上25種類程度存在してきたが、生き残ったのはホモサピエンスのみ。『絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか』

著:更科 功 「つい私たちは、進化において、『優れたものが勝ち残る』と思ってしまう。でも、実際はそうではなくて、進化では『子供を多く残した方が生き残る』のである。『優れたものが勝ち残る』ケースはただ1つだけだ。『優れて』いたせいで『子供を多…

おっぱいの進化史

著:浦島 匡、著:並木 美砂子、著:福田 健二 哺乳類と乳の関係について説明した本。乳製品や乳酸菌についてもページが割かれている。タイトルだけ見ると一瞬余計な期待をしてしまいそうになるかもしれないが、一般向けに極めてまじめに書かれた本である。…

ヒトはなぜ難産なのか――お産からみる人類進化

著:奈良 貴史 全ての哺乳類の中で、ヒトは飛びぬけて難産である。遺伝的に近いサルやゴリラやチンパンジーでも、このように難産ではない。本書は、その理由を、生物学的に探り、同時に文化的な側面からヒトの出産の歴史や風習について軽く紹介している本で…

日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造

著:篠田 謙一 「DNAの物語る歴史は、個人が持つDNAに刻まれた人類の歩みを手がかりに話が組み立てられていますから、必然的に私たち人類すべてが歩んできた道、日本人すべての成り立ちの物語となるのです」。 現在、日本人と呼ばれるわれわれの祖先がたどっ…

人類への道 知と社会性の進化 (別冊日経サイエンス)

編集:篠田 謙一 「サイエンス・アメリカ」をベースにした科学雑誌「日経サイエンス」から、人類の進化に関する記事を集め、4章に分けて編集されたものである。 今、地球上には人類は私たち現生人類(ホモ・サピエンス)しか存在していないが、かつてはそう…

化石とゲノムで探る 人類の起源と拡散 (別冊日経サイエンス194)

編集:篠田 謙一 日経サイエンスの過去の記事から、人類の進化に関する記事を集めて一冊に編集したものである。特にDNA研究が人類学においてもたらした劇的な成果を数多く盛り込んであり、少し古いものも含まれているが、なかなか面白い内容だった。 ヒトと…

生物と無生物のあいだ

著:福岡 伸一 「むしろ直感は研究の現場では負に作用する」 「秩序は守るために絶え間なく壊されなければならない」 「界面は、二つの異なるものが出会い、相互作用を起こす場所である」 面白かった。ただ、本書をより深く理解するには、ある程度の科学的な…

触れることの科学: なぜ感じるのか どう感じるのか

著:デイヴィッド・J. リンデン、訳: 岩坂 彰 タイトル通りの本。この単行本のピンクの表紙も、よく考えたものだと思う。皮膚、神経回路、そして脳。快感、痛み、熱さ、冷たさ、かゆみといった、触れるという感覚を、その感覚を感じ取る末端から伝達する経…

「偶然」と「運」の科学

偶然が宇宙を支配するもっとも基本的な法則であることを教えてくれる科学の読み物。