密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

サンプリングって何だろう――統計を使って全体を知る方法 (岩波科学ライブラリー)

著:廣瀬 雅代、稲垣 佑典、深谷 肇一

 

「サンプリングとは簡単にいうと、数が多すぎたり、規模が大きすぎたりして全容の把握が難しい対象の特徴を、全体から抜き取った一部を調べることによって明らかにする方法です」。

 

 サンプリングの本。統計学社会学社会心理学生態学の3人の専門家による共著。一般向けに易しく書かれてある。ページ数も130ページに満たない。

 

 サンプリングを効果的に行うことで、母集団すべてを調べなくても、統計的に類推することができる。また、日本全国を対象にする場合は、「多段抽出法」を使うこともある。これは、第1次抽出単位とし、投票区などを第2次抽出単位、個人を第3次単位抽出とするもの。

 

 野生動物を正確に数えるのは難しい。そこで、偽陰性を防ぐ方法として、「リンカーン-ペテルセン推定量」が紹介されている。これは、例えば、森で1回目に10個体のシジュウカラを捕獲して標識を付け、2回目に標識付きシジュウカラを4個体と標識なしのシジュウカラが8個体捕獲できた場合、この森にいるシジュウカラは30個体であると推計できる、というもの。これは、以下の式でわかる。

 

総個体=1回目に捕獲された個体数/(2回目に捕獲された標識付き個体数/2回目に捕獲された個体数)

   =1回目に捕獲された個体数X2回目に捕獲された個体数/2回目に捕獲された標識付き個体数

   =10 X 12 / 4 = 30

 

 もっとも、実際のサンプリングにはいろいろな問題が付きまとう。社会調査では、近年、調査拒否が増加する傾向があるという。野生動物を捕まえて標識をつける方法も、それによって生存率が変わってしまうというような人為的な影響が生じる可能性がある。ちなみに、「リンカーン-ペテルセン推定量」を適用するには、2回目の調査はあまり間を置かずにやるのがよいそうだ。

 

単行本、128ページ、岩波書店、2018/3/7

サンプリングって何だろう――統計を使って全体を知る方法 (岩波科学ライブラリー)

サンプリングって何だろう――統計を使って全体を知る方法 (岩波科学ライブラリー)

 

 

真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝 (講談社文庫)

著:淵田 美津雄

 

 真珠湾攻撃の飛行隊で隊長を務めた淵田美津雄の遺稿を元に一冊にまとめてある。意外に内気だった少年時代の様子から、戦前、戦中、終戦後、そしてキリスト教に改宗してアメリカに滞在した頃のエピソードに至るまで詳しく書かれてある。

 一番読みごたえがあるのは、やはり真珠湾攻撃の部分だろう。昨日のことのようにはっきり思い出せるというだけあって、非常にリアルだ。

 盟友の源田実の強い希望で40歳を過ぎているというのに飛行隊の隊長を引き受け、攻撃隊の先頭を飛んで誘導し、一次攻撃隊のみならず二次攻撃隊への指示もした上に残存機の捜索まで行って燃料がなくなるギリギリに帰還したという、大車輪の活躍ぶりには改めて目を見張るものがある。

 盲腸の手術を終えたばかりのミッドウェー海戦での様子にも触れている。また、参謀時代には捷一号作戦を提起したことを述べている。

 真珠湾攻撃で第二派攻撃を行わなかった南雲忠一中将への批判や、連合艦隊山本五十六大将を凡将とする厳しい意見も見られる。対照的に、山口多聞少将への評価は高く、連合艦隊司令長官になる日を待っていたのに、とその死を惜しんでいる。

 真珠湾攻撃の中心的な人物として、戦後は東京裁判に呼ばれたり多くの連合軍の大物と会っている。東京裁判ではパル判事のコメントも引き合いに出しながら、その茶番劇ぶりを皮肉っている。黒人兵士たちにこっそり飲みに連れ出され、白人をやっつけたことに留意が下がったと言われたエピソードもある。ニミッツトルーマンなどとの会見の様子も興味深く読めた。

 キリスト教徒に回心し、アメリカへ行った記述などは、多くの日本人にとってはちょっと複雑な気持ちになるかもしれないが、だからといって淵田個人を責めても仕方がない。また、編者が回想録を保管していた子息にインタビューした内容を含んだ解説も入っている。いずれにせよ、貴重な記録である。

 

文庫、552ページ、講談社、2010/11/12

 

真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝 (講談社文庫)

真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝 (講談社文庫)

  • 作者: 淵田美津雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/11/12
  • メディア: 文庫
  • 購入: 3人 クリック: 10回
 

 

 

今なら間に合う 脱・貧困老後

著:サンデー毎日取材班

 

 雑誌の連載を本にしたもの。貧困に苦しむ高齢者たちの実態をレポートし、そのようにならないようにするにはどうすればよいのか、というアドバイスがつづられている。

 高齢者になると、収入面で2つの考慮しておかなければならない段階があるという。まず、再雇用となる60歳。それまでの年収が800~1000万円あった人でも、ここから年収300万円程度になる。次いで65歳。年金暮らしとなるが夫婦2人で月20万円程度なので、そこからはさらに苦しくなる。よって、このような将来を見越し、貯蓄を行うのはもちろん、退職金は全額老後資金にまわせるようにする。問題になりがちなのは住宅ローンで、これは退職金に手をつけることなくそれまでに完済するようにする。ゆとりローンなどは後が苦しくなるだけなのでやめる。それから、マンションの場合、ローンの返済を終えても、管理費や積立修繕金が毎月かかってくるので注意する。

 とにかく健康維持に気を配る。経済的にも、それが一番安く済む方法だからだ。高額医療が必要になった場合は、国の限度額適用申請などで負担を減らす。そのような制度は自分から申請しておく必要があることを留意し、とにかく使える制度は使うようにする。そして、何よりも孤独を避ける必要がある。また、孤独が犯罪の引き金になることがあり、特にストーカーや万引きは常習化するケースがある。

 あまり時間をかけずに読める本だ。難しくもないし、特別な前提知識もいらない。ただし、例として挙げられている事例は、なかなかつらいものがある。しかも、よほど余裕がある人でもなければ、これらの例を他人事だとは言いきれないだろう。

 現代の老後は長い。当面大丈夫でも、高齢になればなるほど健康もお金も厳しくなる。増え続ける高齢者と悪化する国の財政事情を背景に、社会保障制度もますます厳しくなる。背景にあるのは構造的・社会的な問題だ。しかし、現実問題として頼れるものがあまりない以上、可能な限り元気なうちから準備を重ねるしかないな、と改めて思った。

 

単行本、192ページ、毎日新聞出版、2016/3/11

 

 

今なら間に合う   脱・貧困老後

今なら間に合う 脱・貧困老後

 

 

 

東京ウォーカー CLASSIC 1990's ウォーカームック

 TokyoWalkerの1990年代の記事を抜粋して掲載したムック本。オールカラーで、当時を感じる記事がたくさん載っている。

 

スキー、湾岸、クルマ。

ジュリアナ東京

レインボーブリッジ開通。

ティラミス、ナタデココ、パンナコッタ。

たまごっち。

東京都庁ビル完成。

ドコモのiモード

イタ飯。

お台場のフジテレビ。

GAP、BEAMS

Jリーグ誕生。

東京ディズニーランドスプラッシュ・マウンテン

 

 TokyoWalkerそのままなので、写真が多く、お店の情報が多い。タイムカプセルみたいな感じがする一方、ついこの前のような気がする。日本は全体的に今より若かったし、元気もあった。しかも、そこまで昔ではなく、当時にできたもので、今では東京に溶け込んでいるおのもたくさんある。

 「ボクたちは、この本で東京を知った」というキャッチコピーは少し大げさかもしれないが、商業情報誌を通したビューとはいえ、確かに当時の東京のある一面はとらえた記録になっている。

 

ムック、212ページ、KADOKAWA、2018/4/2

 

東京ウォーカー CLASSIC 1990's ウォーカームック

東京ウォーカー CLASSIC 1990's ウォーカームック

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/04/02
  • メディア: ムック
 

 

ウルトラマンの現場 ~スタッフ・キャストのアルバムから~

監修:円谷プロダクション

 

 ウルトラQウルトラマンの制作にかかわったスタッフや俳優が持っていたものを含めた当時の現場の写真を集めて紹介した本。作り上げたセットの前で撮られた写真や、怪獣のぬいぐるみを調整する姿、ロケ先での撮影の合間の記念写真など、多くの写真が横長のサイズに収められている。

 

 「あの頃は皆若くて、手探りしながら切り込んでいく熱気がすごかったですね。円谷英二さんが、若手を信頼していろいろ任せてくれましたから、自分のこの仕事は、円谷英二からどう見られているのかというのは、常に意識してたと思います。それで中途半端なものが作れなくなってたんですよ」(上原正三

 

 「日本人はすごいなと思ったね。こんな細かいミニチュア作るのなんてほかにないよ。何日もかけてさ、気の遠くなる作業だよね。作ったスタッフにはホント感謝だよ」(西城康彦)。

 

 「ウルトラマンの演技については、脚本の金城(哲夫)さんと話したんですが、金城さんが『人間じゃないし、ロボットじゃないし、動物じゃないし』って言うから、じゃあどういう動きしたらいいんだろうって(笑)。結局は『敏ちゃんの好きにやりなよ、敏ちゃんの動きが宇宙人なんだよ』って、ことになってね。オレが歩いている姿が宇宙人ってつもりで演じました」(古谷敏)。


 最後の方に、「ウルトラマン 高野組完成記念 1967.3.30」と掲げられた集合写真が載っている。写真自体はセピア色に褪せているが、映っている笑顔は、みんな本当に若い。なかなかよかった。

 

大型本、小学館、2016/12/7

 

ウルトラマンの現場 ~スタッフ・キャストのアルバムから~

ウルトラマンの現場 ~スタッフ・キャストのアルバムから~

 

 

 

デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す

著:前田育男

 

「信じるのはただ作品の力である。ただひたすら美しく、圧倒的で、目にした瞬間にその他大勢の製品がすべて色あせて見えるような傑作を作りたいと願っている私は、確かにとびきりのロマンチストであるのだろう」。

 

 マツダのデザイン部門をひっぱってきた責任者が、デザインに賭けてきた思いと考え、そして、一時期の低迷から立ち上がり世界中から称賛されるマツダ車のデザインが生まれた経緯について、自身の歩みも織り交ぜながら述べた本。

 

漢字でシンプルに言い表すことにこだわり行き着いた「魂動デザイン」。

動物図鑑を読み漁り、形を突き詰める。

日本的感性を突き詰める。

クルマには背骨が必要、軸を通す。

デザインをきっかけにブランド価値を高める。

市場調査を止め、ビジョンモデルの市場調査をやる。

ブランドで一番重要なのは、最高の作品を作ること。

ブランドスタイルを一元化する統括部署を作る。

カラーも造形の一部。

人を動かすためには感動させる。

「好きに作ってみろ」と、まず各自にやらせてみる。

職人たちの評価を改善する。

デザインの決定権、イニシャチブをマーケティング側からものづくりの側に移管する。

他業種とコラボする。

自分たちの原点に立ち戻る。

 

 ざっと、このようなことが書かれている。父親もマツダのデザイン担当だったそうだ。共に仕事をしてきた人たちのコメントも書かれている。また、日本のモノづくりが細かな機能にこだわる一方でデザインの優位性に欠けることを嘆いているところもある。終盤は、対談になっている。

 

新書、248ページ、光文社、2018/5/16

 

デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す (光文社新書)

デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す (光文社新書)

  • 作者: 前田育男
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/05/16
  • メディア: 新書