密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

株式ディーラーのぶっちゃけ話

著:高野 譲

 

個人投資家と比べて、ディーラーの環境が優れている点はなんだろうか?最初に思いつくのは、雇用されることで得られる『資金力』『損の負担なし』『世間体』であろう…(中略) …そして、ディーラーの最大のメリットは、基礎から深く学べて、何事にも代えがたいトレードスキルを身に着けられる環境があること 」。


 証券会社の自己売買部門のトレーダーが、実際の株式ディーラーの現場について語った本。著者および周辺のディーラーたちの具体的なエピソードがちりばめてあって、リアル感がある。さすがに、登場する組織や個人は仮名である、という断りがある。

 あえて相場を例えるならば、「賭けごと」だという。給料は成績次第。大金を手にすることができる反面、成績がよくない者は速やかに現場から退去させられる。著者はキャリア8年だが、同期は残っていないし、上下3年間に入社したディーラーで残っているのは2人だけだという。トレーダーたちがどういう経緯で入ってくるのかも興味深い。ちなみに、短期取引が中心だから、ファンダメンタルズ分析をやる人は少ないそうだ。

 個人的に強く印象に残ったことがいくつかある。まず、長くやっているトレーダーは逆張りよりも順張りを意識しているということ。そして、「相場のシナリオは1つしかないのだ」ということ。このシナリオとは、多くの投資家の行動予測と目標であり、相場は常にそのシナリオに従っている。そして、それが崩れたときには株価は大きく動く。つまり、想定すべきことは、シナリオ通りにいったか、いかなかったかの2つしかないのだ、という。

 個人取引の活況やアルゴリズムトレーディングの影響も書かれている。正直、このアルゴリズムトレーディング全盛の今の時代に、トレーダーたちは結構頑張っているな、とすら思った。「悪魔のプラグイン」は、ひどい話だが、確かにありそうだ。それから、取引所の取引時間が延長になれば、ロンドン市場やアメリカ市場と同じ時間に取引することが重要になってくるだろう、と述べられている。

 全体的には、生々しい現場の様子が具体的に書かれていることに加え、時代の変化や著者の考えも述べられており、確かに「ぶっちゃけ話」になっている。

 

文庫、192ページ、彩図社、2016/2/12

 

株式ディーラーのぶっちゃけ話

株式ディーラーのぶっちゃけ話

  • 作者: 高野譲
  • 出版社/メーカー: 彩図社
  • 発売日: 2016/02/12
 

 

依存症 家族を支えるQ&A: アルコール・薬物・ギャンブル依存症 家族のメッセージを添えて

著:西川 京子

 

依存症には大きく分けて2種類あるという。アルコールや薬物のようなモノに対する依存。もうひとつは、ギャンブル、窃盗、ネットゲーム、買い物といった行動や過程に関する依存である。依存症からの回復には、医学的な療法、自助グループへの参加、家族の支援といったことがあげられる。時間も必要になる。

 

依存症についての本。家族の目線や支援を重視して書かれていることが特徴である。かたい書きぶりだが、薄い本で、字も大きい。Q&A形式になっている。

 

依存対象に対する渇望。適度でやめられなくなるコントロールの障害。離脱症状と呼ばれる禁断症状。同じ量ではやめられなくなり耐性が上がる。依存が生活の最優先になる。大切なものを失うとわかっていても繰り返す。

 

依存症は本人も苦しいが、家族も苦しい。否認、自己嫌悪・罪悪感、無力感、絶望感、被害感といった心理を本人も家族も抱くこともある。依存症の家庭に育った人は、アダルトチャイルドと呼ばれ、社会適応の問題をかかえることもある。

依存症患者に対して、「一度、突き放す」というようなアドバイスが行われていたこともあるが、それは間違いだという。周囲が正しい知識を持ち、信頼と尊重と責任を重視して取り組み、支えることが重要だという。

 

なお、コミュニケーションにおいてはいくつかの学説が紹介されているが、これらは依存症に限らず、適用できるような内容である。

 

アルコール依存症家庭の夫婦のコミュニケーションの研究、立木茂雄(1992)

・会話は友好的な調子で。

・相手の気持ちを肯定的に受け止める。

・相手の行動を肯定的に察して信頼を示す。

・相手の面目が立つ具体的な解決策に議論を絞る。

 

ロバート・メイヤーズのDRAFT

 

コミュニケーションの失敗の原因

コミュニケーションの成功の秘訣

1

先に言いすぎる

先に先に口を出さずに、後出しする

2

言葉数が多すぎる

相手より言葉数を少なくする

3

正しいことを言いすぎる

正論で人は変わらないと悟る

4

答えを出しすぎる

答えを出すのは相手だと心得る

5

相手のあらが見えすぎる

相手のあらの指摘は慎重にする

6

先回りして考えすぎる

先回りして考えないようにする

7

感情的になりすぎる

「こちらは理性的」と自分に言い聞かせる

8

起きてもいないことを恐れすぎる

ことが起きてから動こう

9

相手に事実を見せていない

相手に事実を見せる

10

無造作に話しはじめる

大事な話はタイミングを見て話す

 

家族の手記や、依存症の家族が逮捕されてしまったといったような深刻な問題に対する質問への回答もある。

 

単行本、134ページ、解放出版社、2018/4/20

 

 

自重筋トレ100の基本

著:比嘉 一雄

 

先に「中上級編」の方を買い、なかなか良かったので、こちらも注文した。自重トレーニングの基本を100のメニューとともに紹介している本。ムック本サイズでオールカラー。どのように体勢を動かすのか全て写真付きで解説してあるところがポイントである。

冒頭部分には、自重トレーニングに関する基本的な知識をQ&A形式で紹介している。例えば、効果的に筋力をつけるために必要なことは、正しい知識と精神力、というのは、いまさらながら「そうだよなー」と思った。また、終盤では、食事メニューやスポーツ選手のトレーニングの専門家のインタビューが載っている。

表紙には「もう器具などいらない!!」と大きく書かれているが、ボール、タオル、バッグ、椅子、モビリティバンドは使う。

 

ムック、112ページ、エイ出版社、2013/5/21

 

自重筋トレ100の基本 (エイムック 2630)

自重筋トレ100の基本 (エイムック 2630)

  • 作者: 比嘉一雄
  • 出版社/メーカー: エイ出版社
  • 発売日: 2013/05/21
  • メディア: ムック
 

 

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

著:斎藤 康毅

 

Deep Learningの本。入口となる部分について、実に丁寧に、まるで一歩ずつ着実に踏みしめてゆくように書かれているのが特徴である。あまりに丁寧すぎて、畳み込みニューラルネットワークにたどり着くまでに200ページ以上かかっているくらいである。数式や図解も適切に配置されており、総合的にひとつひとつの意味を確実に理解できる。

また、Pythonで書かれた短いプログラムコードで少しずつ動作を確かめながら理解するようにも構成されてもいる。それも、ごく最低限度ではあるがPythonの記述ルールについての説明もあって、いくつかのプログラム言語に通じている人であれば、まだそれほどPythonに詳しくない人でもあまり敷居を高く感じないように配慮されている。加えて、プログラムは本書に書かれているGithubからダウンロードできる。

一歩ずつ、丁寧に、着実に、学ぶことができる。深層学習の本は最近いろいろ出てきて何冊か買っているが、Deep Learningを初歩から学びたいプログラミング経験者向けの入門書として、おススメである。

 

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

  • 作者: 斎藤康毅
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2016/09/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

鑑賞のためのキリスト教美術事典 (リトルキュレーターシリーズ)

著:早坂 優子

 

 西洋絵画はキリスト教の題材に基づいて描かれているものが多くある。つまり、画家の意図を正確に理解するには、絵画技法の知識だけでなく、キリスト教に関する知識が欠かせない。本書は、そのような視点からまとめられた本である。

 

 絵画作品になっている旧約聖書新約聖書の様々なエピソードを漫画と挿絵で紹介し、サイズは小さいがそのテーマについて描かれた絵画作品も掲載されている。

 

 アダムとエバ。エジプトへの逃避。ゲッセマネの祈り。カインとアベル最後の審判十二使徒。十字架降下。受胎告知。十戒。昇天。神殿奉献。スザンナと長老たち。聖母子。聖霊降臨。ソロモンの審判。ダビデ。天国。天使。天地創造ノアの箱舟。バビロン捕囚。バベルの塔ピエタ。復活。ポテパルの妻。マギの礼拝。無原罪の御宿り。紅海の渡渉。ヤコブ。ユダ。ユデットとホロフェルネス。ヨブとその妻。ロトと娘たち。このようなテーマが次々と解説されている。

 

 ビジュアル的によく考えられた構成となっており、読みやすく、わかりやすく、とっつきやすい。西洋絵画だけでなく、キリスト教に関する基礎知識の勉強にもなる。

 

単行本、240ページ、視覚デザイン研究所、2011/3/15

 

鑑賞のためのキリスト教美術事典 (リトルキュレーターシリーズ)

鑑賞のためのキリスト教美術事典 (リトルキュレーターシリーズ)

  • 作者: 早坂優子
  • 出版社/メーカー: 視覚デザイン研究所
  • 発売日: 2011/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 2人 クリック: 1回
 

 

アメリカ人はどうしてああなのか

著:テリー・イーグルトン、訳:大橋 洋一、吉岡 範武

「合衆国は、独特に内向きの社会であり、国務省を除けば他国に対しての意識があまりにも薄い。…(中略)…おそらく合衆国は必要とされている地理の知識を国民に授ける方法として、他国を侵略しているのだろう。バグダッドを打ちのめす決断をすれば、それがどこに存在しているかみつけるための大きな動機づけとなるからだ」。


 ユーモアと皮肉と洞察に富んだアメリカ人論である。アメリカ人というのは極めて多様な人々であることは著者も十分承知しているが、多数を占める項目に目を向けていけば一般論は展開できないことはない。本書はそういう視点でアメリカ人の多くの人に見られる特質を、ヨーロッパ、とくにイギリスとの比較で語っている。結果として、この本は、イギリス人論の側面もある。

 また、イギリス人とアイルランド人も明確に分けて書いており、「ついでながらアイルランド人とイギリス人との鍵となる相違点というのは、アイルランド人が総じてアメリカ人を好きなのに対してイギリス人は一般的に言えばアメリカ人が好きではないということだ」などど、書いている。著者は、イギリスの批評家・思想家。

 人なつっこく、情緒的であけっぴろげ。親切でおせっかい。同じアングロサクソン系であっても、イギリスを歩いているアメリカ人は太っていてチェックの趣味の悪い服を着ているので一目でわかる。

 包み隠さず平明にしゃべる。リーダーは人間的であることが求められる。アメリカ的な一家団欒な雰囲気。宗教と市民精神の強い結びつき。頑張ればできないことはないのだという詐欺的な原理を信じていながら、一向に先進国で最悪レベルの貧困を撲滅しようとしない。

 アメリカは、ヨーロッパに比べて、合理的、効率的、省力的、経済的。否定的な言い方を避ける。伝統や因習は非個人的なものとして考えられ、それよりざっくばらんさが好まれる。形式は意味のあるものしか支持されない。

 イギリス人とアメリカ人の使う英単語の違いや表現の違いについても多くのページが割かれているが、ここは英語に通じていないと日本人には少しわかりにくいかもしれないが、全般的にアメリカ人やアメリカに対する記述には特に違和感はなく、日本人から見ても納得するような指摘が多い。むしろ、対比として書かれているイギリス人に関する記述や、日本人からすると違いの分かりにくいイギリス人とアイルランド人の違いの方に新鮮さを感じるところが多かった。

 「この親切で、暴力的で、また偏狭で、寛大な精神に富む国家についてのグッドニュースとは、もし将来、この惑星で核戦争が起こったとしても、アメリカ人は、真っ先に、身を隠していたクレーターの端から這い出してきて、体の塵をはらい、そして新世界建設へと向けて邁進するだろうということである。バッドニュースとは、核戦争を始めたのは、おそらく彼ら以外にいないということである」。

 
 翻訳ものということもあるだろうが、少々冗長な文章ではある。ただ、その中に、辛辣なユーモアがあちこちに埋められていて、時々爆笑しそうになる。いかにも、イギリス人の知識人が書いたアメリカ人についての本という感じである。

 

文庫、288ページ、河出書房新社、2017/7/5

アメリカ人はどうしてああなのか (河出文庫)

アメリカ人はどうしてああなのか (河出文庫)

  • 作者: テリー・イーグルトン,大橋洋一,吉岡範武
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: 文庫