密林の図書室

日々読んでいる本の読書の備忘録を兼ねたブックレビューのブログです。英語教材も含まれます。日々、様々な本を読んでいます。読みっぱなしにするのではなく、アウトプット化することも本との対話の一部と考えており、このBlogを立ち上げました。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書を通じて多くのことを学び、それは自分にとって目に見えない財産になっています。 尚、過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載しているものもあります。未掲載のものは「Amazonレビュー欄未掲載」のカテゴリーを参照ください。

Amazon Web Services 業務システム設計・移行ガイド (Informatics&IDEA)

著:佐々木 拓郎、林 晋一郎、瀬戸島 敏宏、宮川 亮、金澤 圭

 

 ITの世界においてクラウドの存在感がどんどん高まっている中で、書籍も次々出版されている。この本は、オンプレ環境からクラウドの中でもトップシェアを持つAWS(Amazon Web Services)への移行を検討するユーザ向けに書かれたものである。

 

 特徴としては、まず第一に、分量があるのに全体の見通しがよく比較的読みやすい、ということがある。すべてモノクロ印刷ではあるが、ポイントとなる部分に下線が引かれており、適時図解も挿入されている。第二に、クラウド導入時によく問題とされるアカウント管理を中心としたセキュリティとネットワークについて手厚めになっている点があげられる。データ移行や運用管理や可用性についても丁寧に書かれている。

 

 たとえば、移行のステップについては、2016年のAWSのイベントでの「クラウドジャーニー」の考え方から、以下の4つを紹介し、その上で、単純移行、カスタマイズ、最適化の3つのパターンについて述べている。

 

Project:プロジェクト

Foundation:基盤

Migration:移行

Optimization:最適化

 

 アカウント管理については、事前にきちんと設計しておかないと後で無秩序に作られたアカウントの管理に苦しむことになることへの注意喚起がなされ、RootからOrganization Unitを配置してゆくAWS Organizationsによる木構造の管理方法(アカウント管理、請求一元化、AWSサービスに制限をかける)について、説明がある。IAMについても、ポリシー、ユーザー、グループについてJSONの記述例を示しながら解説されている。VPCの設計の指針についても多くのページが割かれてある。ELBやRoute 53についても書かれている。

 

 第5章のパターン別のシステム設計の解説は特によかった。オンプレミスとの連携を伴わない場合と伴う場合(ハイブリッド環境)、Webシステム向け、DB向け、バッチ処理向け、大規模分析DB用と複数の用途を意識した内容になっており、そのかなで、Auto ScalingやCDN(Content Delivery Network)であるCloudFront、リソース管理の自動化サービスであるCloudFormation、Chefを利用した構成管理のサービスであるOpsWorksなどの解説がある。

 

 あくまでもインフラ中心であり、開発者目線のものについてはあまり触れられていないが、IT基盤やIT運用を担当する人たちがAWSへの移行を検討するために必要なAWSの基本的な概念や具体的な機能及びアーキテクチャー上の指針がよくまとめられていて、予想より良い本だったし、勉強になった。

 

単行本、384ページ、SBクリエイティブ、2018/1/20

 

Amazon Web Services 業務システム設計・移行ガイド (Informatics&IDEA)

Amazon Web Services 業務システム設計・移行ガイド (Informatics&IDEA)

 

 

 

Re Start ~どんな時も自分を信じて~

著:麻美 ゆま

 

 少し前の本だが、以前から気になっていたので読んでみた。著者は、人気の元AV女優でTVでも活躍した麻美ゆま。卵巣境界悪性腫瘍が見つかり、若くして卵巣と子宮を全摘出。つらい抗がん剤治療も経験している。

 本名は「さやか」。日本で最初のフィリピンパブを経営するお父さんと母親の末っ子として生まれて、高崎で育った時期のこと。18歳で芸能界に入ったこと。AVデビューした経緯。頑張ってきた仕事のこと。いくつかの恋愛と別れ。事業がうまくいかなくなり、実家を売却するなど苦しい生活に陥った両親を支える。兄の死。父親に見つかったガン。そして、自身に降りかかった重い病気と闘病生活。これらすべてを、こんなに若くして経験してきたのか、と思う。

 とても優しく性格のいい人だということが、行間からにじみ出ている。また、仕事に対する姿勢をはじめ、強い責任感も印象に残った。たとえそれが厳しいものであったとしても、目をそらさずきちんと現実と向かい合い前を向いて生きてきた芯の強さも伝わってくる。月並みな言い方だが、勇気をもらえた気がした。

 

単行本、280ページ、講談社、2014/5/8

 

Re Start ~どんな時も自分を信じて~

Re Start ~どんな時も自分を信じて~

  • 作者: 麻美ゆま
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

「宇宙戦艦ヤマト」の真実

著:豊田有恒

 

 「宇宙戦艦ヤマト」(以下、ヤマト)は、例えば「銀河鉄道999」のように、マンガの原作があったわけではない。本書は、「ヤマト」の基本ストーリー設定の作成を担当し、作品の監修も行った著者が、プロデューサーの西崎義展との関係を中心にその魅力と問題点を数多く指摘しながら、「ヤマト」について語ったものである。「鉄腕アトム」「エイトマン」にかかわったときの思い出や手塚治虫の人柄、「日本沈没」の小松左京などについても回想している。

 「ヤマト」の発想は「西遊記」をベースにしたものだという。著者の原案の時点ではヤマトではなく内部が居住空間になっている小惑星のようなものだった。西崎義展は同じ高校の出身で会ったときから話が合ったし、人たらしなところがあって、西崎がいたからこそ「ヤマト」は世に出た、と強調している。

 しかし、著者は、西崎によって、裏番組の原作者でもあったことを理由にクレジットから名前が外され、続編も含めて約束した金額のお金はもらえなかった。西崎は、著者や松本零士といったクリエイターへのリスペクトに欠け、知的財産への考えがしっかりしていない時代であったともあり、手柄をひとり占めにしてしまうところがあった。豪遊で湯水のようにカネを使っていたことも振り返りながら、角川春樹とはそこが違うと強く批判している。

 一方、松本零士とは戦争中の武器などで話が合い、西崎と松本の間の著作権の裁判でも著者は松本側に立っている。宮川泰の音楽や佐々木いさおの歌についても高く評価している。

 こう書くとただの暴露本のようにも思えるが、実際は著者がそれぞれのアイディアをどういうところから思いついたのか、ということもいろいろ説明されている。「見てもいないものを、見てきたように話すためには、それなりの工夫がいる」として、「エクストラポレーション」の話をしているところなどは印象に残った。例えば、中国の宦官をベースにSFに登場させるサイボーグの心理を考えて設定する、といったことをしていたそうだ。

 「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの舞台設定が誕生した裏話と同時に、クリエイターとしての発想力の片りんに具体的な形で触れることができて、おもしろかった。

 

新書、224ページ、祥伝社、2017/10/1

 

「宇宙戦艦ヤマト」の真実 (祥伝社新書)

「宇宙戦艦ヤマト」の真実 (祥伝社新書)

 

 

 

松本零士 大解剖

著:松本零士

 

 松本零士作品の解説本。ムック本サイズ。主に取り上げられているのは、『宇宙海賊キャプテンハーロック』『宇宙戦艦ヤマト』『クイーンエメラルダス』『銀河鉄道999』『1000年女王』である。

 それぞれの作品が各所に引用され、ストーリーや相関関係、キャラクターの法則といったような解説などが載っている。名セリフ集、美女図鑑、グッズ紹介、年表、マンガで描かれた「キャプテンハーロック誕生物語」もある。

 

「作品で一貫して言ってきたことは、『夢をあきらめるな』ということ。泣くのはいいが、あきらめるな。あきらめるくらいなら、最初からやるなと。夢とは志だ。夢をあきらめるな。人は生きるために生まれてきた。どんな動物も植物も生きるために生まれてきた。死ぬために生まれてきたものはいない。そう信じて頑張ってくれ。そう伝えたいね」。


 松本零士氏の直撃インタビューもあり、自身の想いについて熱く語っている。また、宇宙飛行士の星出彰彦氏が、小学校低学年のときに『宇宙戦艦ヤマト』のブームで影響を受けた、と語っているインタビューもある。

 扱いとしては小さいが、松本零士コミック作品の海外マーチャンタイジング展開と反響というのは面白かった。『キャプテンハーロック』はフランスでは『キャプテン・アルバートル』として1978年に放映されて視聴率70%に届き、このアニメオタク世代は「アルバートル世代」と呼ばれるようになったというようなことが書かれている。


 あくまでもメジャー作品中心。『男おいどん』や、個人的に結構好きだった『戦場まんがシリーズ』は、年表欄に載っているだけである。

 

126ページ、三栄書房、2016/3/31

 

松本零士 大解剖 (SAN-EI MOOK)

松本零士 大解剖 (SAN-EI MOOK)

 

 

 

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃

著:小林 雅一

 

 タイトル通りの本。ノーベル賞受賞が確実視されているエマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Marie Charpentier)とジェニファー・ダウドナ(Jennifer Anne Doudna)の女性2人の共同チームが試験管内でクリスパー(CRISPER)によるDNA編集に成功したと「Science」に発表したのは2012年6月。今や、ゲノム編集は、簡単に、早く、DNAを編集してしまう技術として生命科学の分野で注目の的になっている。

 ゲノム編集のCRISPER-Cas9は、人工合成されたガイドRNAと組み合わせて利用し、DNAを標的となる特定の塩基列で切断するメカニズムのことである。切断されたCas9誘導性DSB(DNA二本鎖切断)部位は、相同組換え型修復(HDR)で修復される。この仕組みは、きちんと指導を受ければ高校生でも数週間でできるようになるし、将来は現在の美容整形くらいの頻度で普通にDNAを編集する時代が来るだろうという。狙ったところから外れてしまうオフターゲット効果も1%に抑えられるようになったらしい。

 新生児は1人あたり50~100個の突然変異をもって生まれてゆく。SNP(Single Nucleotide Polymorphism)やSNV(Single Nucleotide Variant)と呼ばれる変異、もっと大きなCNV(Copy Number Variant)と呼ばれる変異もある。さらに大規模な転座(Translocation)という現象も起きる。現代では、DNAチップを用いたGWAS(Genome Wide Association Study:全ゲノム解析)によってかなりの数のSNPが特定されている。ゲノム編集技術は、このようなDNA上の変異を編集することができる。

 ゲノム編集技術は既に使われており、腐りにくいトマトや肉量がそれまでの1.5倍の魚が誕生している。ゲノム編集技術は、人間へも適用できる。特に、遺伝子治療と組み合わせれば大きな治療効果が期待できる。生体外治療としてはDNA取り出して変異している部分を編集して体に戻す方法か、正常な遺伝子を組み込んだウイルスを異常な遺伝子を有する細胞に感染させることで置き換える生体内治療がある。これによって、例えばガンを免疫作用で治すことが可能になる。そもそも、生殖細胞のDNAを書き換えてしまえば、遺伝的な原因で生じる病気を出生前にあらかじめ防げるし、身長の高い子供とか、目鼻立ちのはっきりした子供とか、いろいろなことができる可能性が高い。

 本書では、従来の遺伝子組み換え技術がどれほど大変で骨が折れて問題の多い方法であったのか、ゲノム編集技術との比較で解説されているところもある。DNAの役割についての簡便な解説も載っている。また、遺伝子編集技術の先陣争いや特許係争についても取り上げられている。また、このように遺伝子が簡単に編集できる時代が来たことで、人間自体を好き勝手に編集したり好ましい能力や容姿を持った子供を産むといったことができることへの懸念も表明されている。加えて、Googleなどが注力していることや、日本がこの分野でやや立ち遅れていることも書かれている。

 おそらく1か所にまとめて書いた方がよいことが分散して書かれていたりと、本としてのまとまりはもうひとつのところはあるが、科学の本としては理解しやすい方である。ゲノム編集とは何か、どうすごいのか、遺伝子組み換え技術とどう違うのか、どういう問題があるのかについて知るには良い。また、ネットにもいろんな情報が出ているので、本書を読んでからそれらを検索して読めば、さらに理解が深まるのではないかと思う。

 

新書、256ページ、講談社、2016/8/18

 

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書)

  • 作者: 小林雅一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/18
  • メディア: 新書
 

 

 

鉱山をゆく (日本には“宝"があふれている!)

 日本の現役鉱山や廃坑についての情報を集めた本。施設や遺跡を見学できる場所や、鉱物収集に適した場所、鉱山マップ、日本の鉱山史、といった情報も載っている。ムック本サイズ。写真が豊富。全体の3/5くらいがカラー印刷となっている。

 現役で世界でも最も高品位の鉱脈を持つ菱刈鉱山世界遺産に指定され、日本が世界の銀産出の1/3を占めていたころの中心で江戸時代から比較的良好な保存状態で残されている石見銀山。かつて東洋一の銅産出量を誇った公害でも有名な足尾銅山。今や国内で唯一となった現役の坑内掘り炭鉱である釧路コールマイン

 実は今も国内自給率100%である石灰の鉱山宇部伊佐鉱山と八戸キャニオン。世界シェア30%という日本のヨウ素生産の多くを占める南関東ガス田のかん水。日本海や苫小牧沖などの油田・ガス田。

 そして、都市鉱山として注目を浴びるハイテク製品のリサイクル場。海底熱水鉱床コバルトリッチクラストマンガン団塊の3つに代表される深海の資源。

 資源の無い国といわれる日本だが、歴史を振り返ると金銀、水晶、銅、石炭、ヒスイなど世界的にみても多くの資源を生産していた時代があるし、今でも100%自給できているものがある。こんなに山がたくさんあるのだから、探せばもっとあるのでは?と勝手な妄想すら浮かんできそうになる。

 また、かつてにぎわった鉱山で、見学できるところも多くあるようだ。ドライブや観光がてら、ちょっと足をのばしたいという気になった。軍艦島や各地の埋蔵金伝説も紹介してある。オールカラーでないのが少し残念。

 

ムック、112ページ、イカロス出版、2012/8/9

 

鉱山をゆく (日本には“宝

鉱山をゆく (日本には“宝"があふれている!)

  • 出版社/メーカー: イカロス出版
  • 発売日: 2012/08/09
  • メディア: ムック
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